七夕の夜に

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トンネル

アイスランドって、どんなところなんだろう。

退院したら季節が変わっていた。

ある日積み重なった荷物をごそごそしていたら、父が使っていた腕時計が出てきた。すごく汚れていて、処分しようとさえ思わせるものだったが、針が動いていて現在の時刻を示していることに胸を打たれた。

これは私が買ったものである。父が汚れていたのではなく、それだけ月日がたったという事、いつも軟膏を塗っていて、父が触るものはべたべたしていた。それにくっついた汚れでもある。細い腕に、いつも私が買ってきた腕時計をしていた。その光景が一度によみがえり、「がんばったねー。」と言った。父と私とどっちも頑張ったんだ。父の息吹が感じられるような気がした。元気な時は、私の医療に耳は傾けなかっただろう。弱って、仲良くなったようなものだ。大変だったねと言ってくれたのかもしれない。

ウェットティッシュで隅々までゴシゴシしていたら本当にきれいになった。形見という言葉が浮かんだ。あわただしくあるものを買ったのでゴツゴツしたデザインだ。これを身につけようという思いはないが、目につくところに置いて時計として使うことにした。きっとその方が喜んでくれるかもしれない。ピカピカになったよ。

自分にしてみれば遠い遠い過去に思えるが、ずっと荷物に埋もれて針は動いてたんだ。その時はあまりの追いつめられた感で、何をどう置いたかなんて、全く覚えていなかった。こんな荷物は運べない・誰かに手伝ってほしい———-それに始まり、それに終わった。今もそういう👨(ひと)がほしい。